
近年、企業のリスク管理の中でも「サードパーティリスク管理」が急速に重要性を増しています。特に金融業界においては、金融庁が改訂したサイバーセキュリティガイドラインにより、外部委託先を含む幅広いサードパーティーの管理が厳格に求められるようになっています。本記事ではこのガイドラインのポイントと対策として弊社が提供するソリューションについて詳しく解説します。金融業界のみならず、今後ベンチマークの1つとなる可能性もあるため、他の業界の方も参考にしていただければと思います。
1.サードパーティリスク管理が重要な背景と目的
企業活動がグローバル化・複雑化する中で、外部ベンダーや業務委託先が関与する範囲も拡大しており、それに伴うリスクは無視できないものとなっています。
この「サードパーティ」の中でも中心となるのは、主に業務を直接請け負う「委託先企業」であり、その管理体制やリスク状況を正しく把握することが重要となります。
多くの企業では、委託先企業に対して質問票やチェックリストを送付し、情報セキュリティ、法令遵守、BCP(事業継続計画)などに関する自己評価を求める形で対応しています。これにより一定の情報収集は可能ですが、回答内容の信頼性や最新性、また実際の運用状況までは十分に把握できないことも少なくありません。
見落とされがちですが、サードパーティリスク管理を実効的に行う上で、実は「委託元部門」へのガバナンスが極めて重要です。つまり、実際に業務を発注している社内の各部門に対しても、自社のポリシーやルールを十分に理解させ、適切な判断と契約を行わせることが求められています。
委託契約が自社のリスク管理方針に則って締結されているか、契約内容が適切か、契約後も必要なモニタリングが行われているか。これらの確認がなされていなければ、どれほど委託先を精査しても、実態としてのリスクは十分にコントロールできません。
加えて、近年では下請法の改正や、取引の公正性に対する社会的な関心も高まっており、
「適正な価格交渉が行われているか」「委託先との関係性が一方的な力関係になっていないか」といった観点も重視されています。
2.リスク管理とは
リスク管理とは単に企業を守る防波堤ではなく、サプライヤーと企業が持続可能な関係を築くための基盤でもあるという認識が必要です。
このように、サードパーティリスク管理には「委託先企業の態勢の把握」と「委託元部門へのガバナンス強化」という両輪のアプローチが不可欠であり、形式的な管理から一歩踏み込んだ、実態に即した対応が求められています。
3.GRCSが提供するソリューション
こうした課題に対して、包括的に対応できるソリューションの一つが「Supplier Risk MT」です。
Supplier Risk MTは、企業と委託先の関係性やリスク状況を可視化し、統合的に管理するためのクラウド型のプラットフォームです。本ツールを活用することで、従来は個別部門任せになっていた委託管理を、企業全体として統一されたポリシーに基づき運用することが可能になります。
Supplier Risk MTには、以下のような特長があります。
<質問票の一元管理とテンプレート化>
業種や委託内容に応じた質問票を一括で管理でき、内容の更新や配布も簡便。過去の回答履歴や改善状況の追跡も可能です。委託元部門の管理機能:誰がどの業務をどの委託先に依頼しているかを可視化し、未承認の契約やリスクの高い取引を早期に発見できます。リスクレベルの自動評価:質問票の回答内容に応じて、リスクスコアを自動算出。対応すべき重点項目が明確になります。
<法令対応と価格交渉状況の記録>
下請法の順守状況や価格交渉の経緯を記録・管理し、公正な取引の証拠として活用できます。これにより、委託元・委託先双方の行動がポリシーに即して行われているかどうかを、組織全体で管理・評価することができ、属人的な管理から脱却することが可能となります。
また、内部監査や金融庁などの外部監査対応時にも、データに基づいた説明責任を果たすことができるため、リスク管理の信頼性も大きく向上します。
4.まとめ
今後、外部委託はますます多様化・複雑化していくことが予想されます。
そうした中で、Supplier Risk MTのようなツールを活用し、全社的かつ継続的に委託管理を強化していくことが、
サードパーティリスク管理の高度化につながると同時に、企業としてのガバナンス力や社会的信頼の確保にも大きく
寄与するでしょう。
形式だけの管理から脱却し、実効性のあるリスクマネジメントへ
今、その一歩を踏み出す時です。
参考:金融庁「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」
https://www.fsa.go.jp/news/r6/sonota/20241004/18.pdf

徳永 拓
株式会社GRCS 執行役員 MTシリーズ開発責任者
大阪大学大学院工学研究科卒業後、日本ヒューレット・パッカード株式会社にて、国内開発セキュリティ製品のコンサルティング、製品企画、戦略策定に従事し、市場No.1のシェア獲得に貢献。その後、2016年にGRCSに参画し、全社リスク管理をはじめとするクラウドサービス等の開発およびマーケティング責任者に就任。